パレット

Twitterアカウント→fuchan318。言葉を紡ぐことが好きです。

花火の詩

夜空がうるさかったら それはもうれっきとした暴力だから、泣いてもいいよ。
テーブルの足が取れかけた部屋から見る星。綺麗。
光の柱に身を寄せてうたう鼻歌だけが夜空を壊してくれる。

遠くの方で、花火の上がる音が聞こえます。

その頃、私は天井にシャワーの粒をぶつけて、浴室に雨を降らしていた。
私は相変わらず、私に向けて歌をうたっているし、
身体のなかを流れているであろう血液が、出来るかぎり君の名前を運ばないように気を紛らわしていた。

38℃のシャワーと 自分の歌には、10分前から飽きているよ。
折り紙付きの折り紙って、どんな折り紙かな。
いったい何粒の雨が、この浴室を流れていっただろう。
火花が思考の隙間を広げて、私のふやふやになった脳は、やっぱり、ちいさな声で君の名前を呼び続けている。

沈殿

息をしているだけでは何も起こらないから、

せめて何かがほしくて、要らない哀しみまで無理に拾ってた。

水深1000mの海底に沈む得体のしれない骨のために、

ぎこちなく泳いでは微かな水流を届けるような。

 

普通に無駄だし、大して哀しくもないのに哀しいフリをしてるし、

垢とか言葉の死骸みたいなものが海底に沈んで、汚れていく。

 

「私は此処だよ」と、叫んでみたかった。

養分も摂らず、光を探していたかった。

月明かりに照らされた美しいキミを、ずっと見ていたかった。とか、

考えながら、いまも水深1000mを漂っている。

ぶきよう、でこぼこ、かんちがい

2人で星を眺めていると、きみは、わたしは、きっと哀しい。

 

「月が綺麗ですね」が、”君を愛してる”になるなら、

「星が綺麗ですね」って、侮辱されてるようにしか聞こえない。

たくさんいる中のひとりってこと。

 

きみはきみで、思わせぶりな態度とか平気でとっちゃうし、

わたしはわたしで、さっきからずっと流れ星を探している。

 

きみは隣にいるのに、流れ星に頼るのもおかしな話だけど、

わたしたちは、織姫と彦星じゃないし、何かと曖昧な関係がずっと続いてることの方が、よっぽどおかしくて気持ち悪いって、冷静に考えられるだけの十分なツマらなさがそこにあった。

 

それでもね、きみが何か言った気がしたから、わたしは素直に

「ごめん、聞いてなかった」って言ったらきみは本気で哀しんでくれた。

その様子を見てわたしは少し喜んじゃったから、

わたしはきっと、今でもきみが好き。

飴玉

君はまるで飴玉でも舐めるように、淋しさを体内へと消化させている。

淋しさに帰属するすべての存在は何かに愛されなければいけないって、
そんな気がしていたから、僕は星を眺めていたし、君の瞳に映る世界が綺麗だって確かめていたかった。

信じていたかったのに、それはガチャピンの中に人が入ってると知った時に似た感覚で、何となく分かってたのに、いまさらでも、あえて驚くように出来てるのが僕らだ。

淋しさや嬉しさを感じたまま、ピザみたいにトッピングすることが正解なら、
君も僕もささやかに人間失格と言われているようなものなのかもしれない。

そして、もうすぐ君はいなくなる。
いつか、きっと後味もないまま飴玉みたいに消えてくよ。
それでも結局は、君も僕もただの人間で、
寝苦しい夜を日々 消化しているだけの人間なんだろう。

しゃぼん玉の詩

キミの瞳に映ったのは、想像してなかったほどの棒人間で、腕時計の設計図くらいには複雑だろうと思い込んでいたボクの感情は宙に浮いた。

輪廻転生してるのは自分で、
君はいつも変わらない。

感情の波に流されたのは自分で、
それでも、いつも隣にいたのはキミだった。

しばらく聞いていない「またね」の対義語が、
昨日聞いた「幸せになってね」だってことは分かってる。
それでも思ったほど涙はでなくて、
浮いた感情に手を伸ばすと、届きそうで届かず、のっそりと空を切った。